スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

倉本智明 『 だれか、ふつうを教えてくれ!』

「ふつう」とは何かを問い、よりよい「ふつう」をつくりあげていくために

 本書は、理論社の「よりみちパン!セ」シリーズの一冊であり、中学生向けに書かれている。障害学や知識社会学、相互理解、人と付き合うということとは何かということを分かりやすく、平易な言葉で綴っている点が優れている。
 著者は、自らの経験や体験をもとに、具体論から一般論を導きだし、「ふつう」「障害」とは何かと考えるところから、様々な想像力で自分の障害とその付き合い方について語る。
 例えば、著者は二十歳過ぎまで弱視で、だんだんと全盲になっていくという経験から、軽度障害者/重度障害者という枠組みすら本質的でないことを主張する。「重度」障害者の方が生きにくいのではないかという一般的な見方から、むしろ「軽度」障害者の方が、社会の中で生きにくいこともあるのではないかということも自らの体験を通して明らかにしている。
 著者の論点で重要なところは、人が「障害」を「わかる」あるいは「理解する」ということにかなり疑問を持つところだ。「わからないこと」を「わからない」と自覚していることが重要なのではないか。相手のこと、他人のことは、本人に聞いてみなければ「わからない」。また本人ですら「わからない」ことがあると述べる。

 「障害者であろうが、健常者であろうが、人間を簡単に理解することなんてことは、もともとできっこないことなんですね」(116)。
 「むしろ大切なのは、『自分は相手のことをわかっていないんだ』ということをちゃんと知っておくことではないでしょうか」(117)と述べている。

 特に、最後の章で述べられている、人と人との付き合い方、相互理解の仕方には学ぶところが多い。少数の人と人との付き合い方から多数の人の集まりである「社会」という集団の中で、よりフェアなルール(=ふつう)づくりの困難さが述べられている。だが、その解決策は具体的には述べられていない。それは、新書という啓蒙的な本書を土台として、これからの障害学という学問や、政治/経済/社会の合意という分野の課題であり、私たちがこれから考えていくことである。本書のタイトルである「だれか、ふつう(よりフェアなルール)を教えてくれ!」との著者の呼びかけでもある。








にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

(2007/11/11 BK1)
 
スポンサーサイト

川田 隆一 『怒りの川田さん―― 全盲だから見えた日本のリアル』

バリア(障害)は細部に宿る

 この本の著者は全盲で、それが日常生活を送っていく上において、どういう風に障害となってあらわれるかを、観念論にならずに、具体的で、分かりやすく述べている点が優れている。抽象的な障害(者)論というのは、たくさんあるが、ここまで具体的な事例を数多くあげている本書は特筆に値する。

 全盲の人がどういう場面で困り、人の助けを必要とするのか。また必要としないのか。どういうモノが障害となり、またならないのか。ユーモアも交えながらも抽象論に陥りがちなものを細かく一つ一つ述べている。

 本書の論点は、こうだ。「障害を持ったからといって、損をすることも、もちろん得をすることもない、どんな人も同じに生きられる日本を、みんなで一緒に作っていきましょうよ」(3)ということである。「障害者も健常者と変わりありません。頑張っている人もいれば、どうしようもない人間もい」る(162)という当たり前のこと、障害者をお涙頂戴で語られることもイヤだし、語ることもいや。障害者だからといって、優遇や甘えを許さないという立場。こういうところに論点が置かれている。障害者も健常者も建て前ではなく、「本音」で語ることが必要だという著者には同意するところが多い。

 本書は川田さんが感じる障害とはこういうものだという論点を深く細かく掘り下げる。また全盲ということの個別性をもった障害に対してのみ発言している点で、決して一般論ではない、自分の障害から見た当事者論の一つである。 全盲の世界というのは、こうなんだ、ということが具体的に手に取るようにわかるという点で優れている。医療関係者に対しての文脈で出てくるのだが、たとえ専門的な知識はなくても、「人を思う心さえあれば」(116)という言葉が、僕の心に突き刺さった。

 「福祉施設が率先して障害者を腫れ物のように扱うから、弱気でろくに努力もせず、すぐに人に頼る温室育ちの障害者が台頭する」(99)という障害者自身に対しても著者は非常に厳しい。

 障害(バリア)は人間と人間の関係性の中で生み出されるものだということ、またそれを解決するのも人と人の関係性の中で解決されるものだということをつくづく思い知らされる。人間は人と人との中(社会)でしか生きられない。そうしたことを思い知らされる一書であり、そうした社会の中で生きる当事者すべての人(障害を持つ人と持たない人)に読んでもらいたい。








にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

(2007.3 BK1へ)
プロフィール

mamu895

Author:mamu895
トーシツの持病(障害)を持っていることもあり、非正規で働くアラフォー男です。なかなか本は読めないし、書評も思うように進みませんが、本は好きなので読んで良かったと思う本・感動した本を紹介していけたらなと思います。今後読みたい本なども書いていけたらと思います。最近になり改めて公共図書館の魅力を感じています。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。