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帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)著  『閉鎖病棟』(新潮文庫)、1997。

帚木蓬生著  『閉鎖病棟』(新潮文庫)、1997。

現役の精神科医師が書いた小説。専門の統合失調症を中心に据えている。
精神科病棟に入院している人たちの生い立ち、重く抱えたものなどを描いている。
映画化もされているが、書店のポップで火が付き、何年か前にベストセラーになった本。
泣けて感動できる一冊。







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姜尚中 著  『心』



「死」とは何かという真摯な問いから生まれたもの 

 「心」、きわめてシンプルなタイトルであるが、このタイトルに込めた思いは深い。「先生」である姜尚中とのメールのやり取りをする大学生との書簡体で成り立っている小説だ。

 親友との恋愛における三角関係、「死」と「生きる」ということ。夏目漱石の『こころ』を意識し、それを土台にして、独自の世界観を生み出している。漱石の『こころ』は大変に重たいテーマを扱っているが、この『心』もまた極めて重たいテーマなのだ。

 「死」とは何なのか、という主人公の大学生の真摯な問いに答えていき、その上で「自分」とは何なのか、「生きる」とは何か、「人間」とは何か、「人生」とは、その「意味」は一体何なのか、といったようなことだ。

 そうした主人公の切実で真摯な問いに対して、先生である姜尚中も真摯に対峙して応答をしていく。
 「死」があることで、初めて「生」に意味を見出していく。

 3.11東日本大震災を通して、海の中の死者を捜索するという過酷なボランティア活動を通して主人公の大学生は成長していく。その成長とともに、先生の姜尚中も自分自身を見つめ直す。ちょっと抽象的だが、引用してみる。
 
 「君の取り組みを見て、わたしは改めて死は生の中にくるまれて存在していることを実感しました。死と隣り合わせ、死と表裏一体でつながっているからこそ、生は輝き、意味のあるものになる。そのことを改めて感じました。/死の中に生が含まれている。/生の中に死が組み込まれている。/それは矛盾ではありません。それが人間というものの尊厳を形成しているのです」(p.167)
 
 そうしたボランティア活動の経験から実感を伴った、「死」への向き合い方を、主人公自らが得ていく。その「死」(海で亡くなった人たち、具体的には死体たち)へと向かう過程は実に生々しい。彼はそのボランティアの過酷な状況下のため、精神に異常をきたしてしまう。心的外傷後ストレス障害、PTSDだ。

 しかし、主人公はそうした障害を抱えながらも、少しずつ前へ進んでいく。

 先生は主人公を励ましているようで、逆に励まされていたのではないか、と思い始める。
先生の亡くなった息子を、主人公の中に見ていたのだ。この物語は、姜尚中が息子を弔うために書かれた一書であるともいえなくもない。息子の死に対峙し、どう整理したらよいだろうかと考えたために書かれたともいえるだろう。









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mamu895

Author:mamu895
トーシツの持病(障害)を持っていることもあり、非正規で働くアラフォー男です。なかなか本は読めないし、書評も思うように進みませんが、本は好きなので読んで良かったと思う本・感動した本を紹介していけたらなと思います。今後読みたい本なども書いていけたらと思います。最近になり改めて公共図書館の魅力を感じています。

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