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アンダーライン

「心っていうのは体の中にあるのではなく人と人とがかかわった時に発動するものです」(p.25)
「人と人がかかわった時 心ができる/自分自身に向きあった時 心ができる」(p.25)

『ツレと貂々、うつの先生に会いに行く』(2011、朝日新聞出版)より。





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横川 和夫著 『降りていく生き方 ―「べてるの家」が歩む、もうひとつの道』

生きづらさを捨てていくということ

 「べてるの家」は北海道浦河町にあり、さまざまな商売・事業を、統合失調症患者を中心として精神障害を持つ人々が行っている社会福祉法人のことである。昆布の袋詰め作業、病院の清掃、食器洗い、配膳などいろいろな仕事を行い、年商一億を超える。

 本書は、「病気による生きづらさ」をどうやって解消しているのかということについて丹念に聞き取り取材を行った記録からなる。「べてるの家」の関連本は「当事者研究」をはじめとして近年何冊か出ているが、本書は「降りていく生き方」をキーワードに据え、当事者ではない第三者から見た「べてるの家」である。

 特徴的なのは「べてるの家」の人々をサポートするソーシャルワーカーである向谷地生良さんや、精神科医・川村敏明さんが、なぜそのような取り組みを始めたのかを学生時代までさかのぼって「人間観・人生観」についても取材されているところだ。他の、べてるの本にはあまり紹介されていない影の部分(バックボーン)が紹介されているので、このあたりも興味深い。

 著者の横川和夫氏の取材の妙が現れているところは、精神障害者を通して、普遍的な人間の生きづらさ、本質的なものを言い得ているのではないかと思うところである。そうでありながら、本書は大変面白く、興味深く、読んでいくうちにぐいぐい引き込まれる。

 ここでは、そのことにはあまり触れずに、本書のタイトルでもある「降りていく生き方」とは何なのか、以下引用する。

 「ほんとうの回復というのは右肩上がりの高いところにあるのではなくて、自分のなかの低いところ、それも自分の真下にあることがわかった。つまり妄想は消えないけれど、あきらめることで自分は楽になれたと書いている。それはたんに、病気の回復論ではない、人間のあり方、生き方を語っているのだと思いますね」(p.60)。

 「私たちは近代化や合理化を通じて、人間として本来もっている基本的に大切なもののうえに、学歴とか経済力とかを、オプションのようにプラスアルファの価値として身につけてきたわけです。回復するということは、人間が人間であるために、そういう背負わされた余計なものをひとつずつとり去って、本来の自分をとり戻していく作業なんです。何をしたらよいか、何をしてあげなければならないかではなく、何をしないほうがよいか、何をやめるか、つまり足し算ではなく引き算が、べてるの家のキーワードです。それが降りていくということでもあり、そうすることによって、人間が本来もっている力を発揮できるようになっていく、という考え方なんです」(p.67)。

 「人間の持つ弱さ」を認めること。つまり、等身大の自分を認めること。無理に背伸びをしないこと。今・ここにいる自分の「ありのまま」を認め、それに満足すること。私も精神病当事者で、かつて今は亡き大学時代の恩師に「一度裸になって取りとめのない日々を過ごしては如何」と手紙をもらったことがあるが、長い間その意味がわからなかった。この本を読んで、これは恩師が僕に「余計なものは捨てて」、「本来の自分を取り戻せ」と言われているように感じた。
 
 「ほんとうの回復というのは右肩上がりの高いところにあるのではなくて、自分のなかの低いところ、それも自分の真下にあることがわかった」という主張に耳を傾けずにはいられない。この思想は、精神病者だけでなく、現代を生きる人々にも通じる価値ではなかろうか。

(2011/08/25 BK1へ)





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中村うさぎ著 『こんな私が大嫌い!』

<自分>と距離を持つ生き方のススメ

 『みすず』3月号、読書アンケートで、『おひとりさまの老後』の社会学者・上野千鶴子が、中村うさぎのこの本を紹介していた。中村うさぎは読んだことはなかったが、理論社の「よりみちパン!セ」シリーズであり、上野氏ご推薦ということもあり、さっそく購入して読んでみた。

 中学生向けに書かれたものであり、ルビも振ってあり、大変読みやすい「よりみちパン!セ」シリーズだが、この本の中村うさぎも、難しいことをわかりやすく語っている。難しいことを難しく言うことは誰にでもできるが、難しいことを大変わかりやすい言葉で表現することはそうそう簡単にできるものではない。

 この本において、中村うさぎは「自分を嫌いにならない」ために「自分を好きになりすぎない」「自分に距離を置く」という到達点に立っている。自意識とどう向き合っていくか、ということを自らの経験に基づきながら筋道を通してわかりやすく説明している。

 中村は、「自分嫌いの人」というのは、本当はすごく「自分好き」なのではないかという仮説を立てている。自分を好きだからこそ、自分が傷つくのが怖い。こんなのは自分ではない。自分はもっとできるはずだ、という自分に対する過大評価である。

 中村は、長所・短所を取り上げて、それぞれはコインの表と裏であるということを言っている。あえて難しい言葉を使って表現してみると、自意識(アイデンティティ)のもつ両義性(アンビヴァレント)について語っている。このことを読者である中学生でもわかるように説明している。先に述べたとおり、難しいことを難しくいうことはたやすい。だが、わかりやすい平易な言葉で述べるということをやってのけている著者に脱帽するほかない。
 「私に言えるのは、ふたつだけ。『自己評価』というものが、いかに主観的で一人よがりで間違ってるかという事実を、ちゃんと自分でわかっておきましょう、ということ。そして、そんなものに振り回されて自分が大嫌いなんて思っている自分を外から眺めて、『まーた、そんな大げさに悲観して。アホやなぁ』って笑ってあげる訓練をしてみよう、ということ」(p.73)。それだけで、僕らはずいぶん楽になる、と。

 中村がこうした思考にたどりつく道のりはそう簡単なものではなかった。そんなことを中村自身の歴史をたどりつつ、またゲイ(「オカマ」)の友人の話を交えたりしながら説明している。

 語りかける読者は中学生だが、大人が読んでも目からうろこの一冊だ。私も<自分>との付き合い方を考えさせられる大切な一冊となった。

(2010/02/19 BK1へ)







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業田良家著 『ロボット小雪 新・自虐の詩』

「世界中の向こう岸を解放したい」

物語は近未来の日本と思われ、人々はロボットとの恋愛に夢中になっている。生身の人間より何でも言うことの聞く、言わば理想形のロボットと疑似恋愛をする。主人公・拓郎の恋人であるのが、もう一人の主人公、ロボット・小雪だ。

 この小雪というロボットが「心」を持ってしまうことから、この物語は大きな山場を迎える。

 そんなロボットと暮らすほど裕福な社会がある一方、「向こう岸」と呼ばれる言わば「スラム街」が登場する。そこは、ロボットの維持費より使い捨ての人間の労働力の方がよっぽど安上がりな世界だ。経済的に一度踏み外すと、「向こう岸」で暮らすしかなく、「こちら側」には戻れない。

 その「向こう岸」には、「分子力発電所」という施設がある。株の大暴落でお父さんの会社が潰れ、「向こう岸」に家族で行かざるを得なくなった拓郎の親友・広瀬が、その劣悪な労働条件下で働くことになる場所だ。母はゴミ山で缶を拾い、父は仕事にありつくことができず、「赤血球」を売ったり腎臓を30万円で売ってしまったりする。

 広瀬は、分子力発電所での日雇いの労働者から、次のような言葉を聞く。
「富を作り出すには3種類の方法があるべや/ひとつは地球から搾り取る方法/石油・資源・水・作物すンべて地球から取り出したものだべ?/あとは人間/俺たち下っ端の人間から時間と労力を搾り取るべさ/最後に未来の子供たちから搾り取る/国の借金、自治体の借金/手にするのは現在のお金持ち、支払いは未来の子供たち…」(p.133)。

 「向こう岸」とは、人間をモノとして扱い、「下っ端の人間から時間と労力を搾り取る」システムのことだ。「向こう岸」は生きるために犯罪が絶えず、生きるためにはどんなことでもしないといけない街だ。人間が「生きるか死ぬか」の二者択一のギリギリで生きていく場である。その社会では事件があろうとも決してニュースになったりすることのない社会だ。正しい情報が報道されない、むしろ隠蔽される社会だ。

 拓郎たちのいる社会は「向こう岸」があるにも関わらず、「向こう岸」を見ようとしない。「何か大変なところ」、「こわいところ」、「負け組」の行くところ、という認識くらいしか人々は持ち合わせていない。自分たちとは無関係な場所であると。

 ロボットの小雪はこう言う。「私はこんなひどい世界を変えるつもりです/ロボットの私がこんなことを考えるのはいけないことでしょうか/でも人間にはこの社会を変えることはできないと感じています/だから私がやるしかありません」(p.166)と。

 小雪はなぜ、どうして「でも人間にはこの社会を変えることはできないと感じて」いるのか。今の私たちが考えなくてはいけない問いではないのか。

 そんな「向こう岸」に疑問を持ち、なぜ貧富の格差があるのか、どうしたら解決するのかと真摯に考え行動するのが、心を持ってしまったロボット・小雪なのだ。「世界中の向こう岸」を解放したいと考え、実際に小雪は行動に出る。今ここにある「向こう岸」の人々を解放することから。

 「情報は世界を変えます/それが真実の情報ならなおさら」(p.151)とロボット・小雪は語る。


 本書は、業田良家の漫画、2008年の作品。

(2011.7 BK1へ)







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岡本太郎 『自分の中に毒を持て』

「芸術は爆発だ」の意味するもの

 岡本太郎の私の印象は、晩年のテレビや雑誌での「自由奔放なおじさん」、あるいは、テレビCMでの「芸術は爆発だ」で有名な芸術家であり、タレントとしてのイメージが強い。そして、その「芸術は爆発だ」という言葉が岡本太郎というキャラクターとともに、作品よりも残っていた。

 今日、「生誕100年 岡本太郎展」が催され、展覧会を取り巻く様子からは、岡本太郎が再評価され、また人気の高さが伺い知れる。

 そんな中、私も展覧会へ行ったり、数冊、岡本太郎の著作を買い求めたりした。その中の一冊が、『自分の中に毒を持て』で、今回取り上げるものである。これは太郎の芸術に関する考えを知るには大変参考になる一書である。また太郎から、常識を疑うモノの見方と、生きる力をもらうことができる一書でもあるだろう。

 そんな点で、本書の重要な論点はたくさんある。が、ここでは、太郎の有名な「芸術は爆発だ」という言葉の真意はどこにあるかを考えてみたい。

 私は、太郎の言う「芸術は爆発だ」は、物理学でのビッグバンのようなもので「僕らにはよくわからないもの」で専門家=芸術家、あるいは岡本太郎の「記号」のように思えていた。その言葉の真意はわからなかった。
 
 また、一般に「爆発」というと、周囲を含め破壊するというイメージが強い。今回の「生誕100年」の展覧会は、権威や既存のものとの「対決」というものをキーワードとして企画されている。確かにそのような「破壊的」意味でも使われることもあるだろう。が、実は太郎の真意はそこだけではない。

 太郎はこう言う。「いま世間で芸術と思っているのは、ほとんどが芸術屋の作った商品であるにすぎない」(p.190)とし、「芸術というのは生きることそのものである」(p.190)。「人間として最も強烈に生きる者、無条件に生命をつき出し爆発する、その生き方こそが芸術なのだということを強調したい」(p.190)。あるいは、太郎の言う爆発とは「全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと」(p.191)だ。

 これらの文章だけ抜き出すと、少々抽象的で感覚的だ。言い換えてみれば、太郎の「芸術は爆発だ」という言葉は「既成(あるいは権威)の価値を壊す」という「対決」という意味合いとともに、「芸術は人間の内側からの爆発=自己の内面を解き放つこと」であり「本当に生きがいを持って瞬間瞬間に自分をひらいて生きているかどうか」(p.216)だ。
 
 「芸術というのは生きることそのものである」(p.190)。「その(人間の)生き方こそが芸術なのだ」(p.190)ということを太郎は強調する。ここでも「芸術」の意味はいささか抽象的な意味のようにも思えるが、本書を始めから読んでいくと、「ああ、そうなのか」と納得してしまいそうになる。だが、ここで、わかった気にならず、ぐっとこらえて「太郎の言葉」を私たちは、自分の生活の場(文脈)に置き換えてみる必要がありそうだ。以下のように太郎は言う。

 「繰り返して言う。何度でもぼくは強調したいのだ。すべての人が芸術家としての情熱を己の中に燃えあがらせ、政治を、経済を、芸術的角度、つまり人間の運命から見かえし、激しく、強力に対決しなければならない」(p.204)と。たとえ一面、芸術家でない「僕たち私たちも」、その芸術家としての情熱を持ちつつ、政治や経済、あるいは、さまざまな「社会のシステム」に対峙せよ、という太郎の思いが込められているのだ。

(2011.5 BK1へ)







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プロフィール

mamu895

Author:mamu895
トーシツの持病(障害)を持っていることもあり、非正規で働くアラフォー男です。なかなか本は読めないし、書評も思うように進みませんが、本は好きなので読んで良かったと思う本・感動した本を紹介していけたらなと思います。今後読みたい本なども書いていけたらと思います。最近になり改めて公共図書館の魅力を感じています。

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