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川田 隆一 『怒りの川田さん―― 全盲だから見えた日本のリアル』

バリア(障害)は細部に宿る

 この本の著者は全盲で、それが日常生活を送っていく上において、どういう風に障害となってあらわれるかを、観念論にならずに、具体的で、分かりやすく述べている点が優れている。抽象的な障害(者)論というのは、たくさんあるが、ここまで具体的な事例を数多くあげている本書は特筆に値する。

 全盲の人がどういう場面で困り、人の助けを必要とするのか。また必要としないのか。どういうモノが障害となり、またならないのか。ユーモアも交えながらも抽象論に陥りがちなものを細かく一つ一つ述べている。

 本書の論点は、こうだ。「障害を持ったからといって、損をすることも、もちろん得をすることもない、どんな人も同じに生きられる日本を、みんなで一緒に作っていきましょうよ」(3)ということである。「障害者も健常者と変わりありません。頑張っている人もいれば、どうしようもない人間もい」る(162)という当たり前のこと、障害者をお涙頂戴で語られることもイヤだし、語ることもいや。障害者だからといって、優遇や甘えを許さないという立場。こういうところに論点が置かれている。障害者も健常者も建て前ではなく、「本音」で語ることが必要だという著者には同意するところが多い。

 本書は川田さんが感じる障害とはこういうものだという論点を深く細かく掘り下げる。また全盲ということの個別性をもった障害に対してのみ発言している点で、決して一般論ではない、自分の障害から見た当事者論の一つである。 全盲の世界というのは、こうなんだ、ということが具体的に手に取るようにわかるという点で優れている。医療関係者に対しての文脈で出てくるのだが、たとえ専門的な知識はなくても、「人を思う心さえあれば」(116)という言葉が、僕の心に突き刺さった。

 「福祉施設が率先して障害者を腫れ物のように扱うから、弱気でろくに努力もせず、すぐに人に頼る温室育ちの障害者が台頭する」(99)という障害者自身に対しても著者は非常に厳しい。

 障害(バリア)は人間と人間の関係性の中で生み出されるものだということ、またそれを解決するのも人と人の関係性の中で解決されるものだということをつくづく思い知らされる。人間は人と人との中(社会)でしか生きられない。そうしたことを思い知らされる一書であり、そうした社会の中で生きる当事者すべての人(障害を持つ人と持たない人)に読んでもらいたい。








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mamu895

Author:mamu895
トーシツの持病(障害)を持っていることもあり、非正規で働くアラフォー男です。なかなか本は読めないし、書評も思うように進みませんが、本は好きなので読んで良かったと思う本・感動した本を紹介していけたらなと思います。今後読みたい本なども書いていけたらと思います。最近になり改めて公共図書館の魅力を感じています。

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