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大野更紗『困ってるひと』

「難」との闘いの記録

 本書は、大学院でビルマの難民について研究中、ある日突然、原因不明の難病にかかりながら、世の中をサバイバルしていく女子の記録である。だが、この本はただの闘病記ではない。赤裸々でありながらエンターテインメントとしてもとても面白く読めてしまう闘病記だ。続々と立ち現れる「難」たち。「難」というのはもちろん「病気」ことでもあるが、その「難」は社会で生きることによって生まれる「難」でもあり、わざわいである。

 発病したが「病名」すらわからない状況から、「難病」と呼ばれる病気と判明しながらも、社会との接点を求め、生きていこうとする決意の記録、また社会や、さまざまな制度、「モンスター」との闘いの記録である。大変な困難の中で生きていこうとする意志の表明でもある。なぜ「生きよう」と思ったのか。しかし、そんなこと考える暇もないくらいな壮絶な「難病」と「難」との闘いである。

 彼女が描く世界は、赤裸々で、どろどろしている。だが軽快であり、躊躇なく描かれている。いや躊躇がないわけではなく、「難」を乗り越えるためには必要不可欠なのだと思う。それくらい真剣勝負なのだ。真剣な闘いゆえ、「この本を出して果たして今後大丈夫なのか?」と心配になるくらい赤裸々に書かれているのだ。例えば、彼女が全幅の信頼を置き、共に難病と闘ってきた医者たちまでも敵に回してしまうかもしれないのに。「難病」を抱えて社会で生きることと、医者たちが考える「難病」の隔たりの大きさをあからさまに言い当ててしまっているのだ。

 難病を抱えながら書いているとは思えないほど客観的かつ分析的でありながら、「女子」の視点も常に忘れない。闘病記でありながら、かつ社会批評的であり、かつエンターテインメントな文章だ。「難」は自分の中に「病」として現れるだけではない。社会との関係の中で「難」が出現するのである。そのことを思い知らされる秀逸な記録である。社会という「モンスター」と闘う中で、ささやかな希望を持ちつつ、彼女は「生きること」を選択するのである。 そして、今現在も闘争中である。

(ページは単行本バージョンのものです。)








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mamu895

Author:mamu895
トーシツの持病(障害)を持っていることもあり、非正規で働くアラフォー男です。なかなか本は読めないし、書評も思うように進みませんが、本は好きなので読んで良かったと思う本・感動した本を紹介していけたらなと思います。今後読みたい本なども書いていけたらと思います。最近になり改めて公共図書館の魅力を感じています。

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